きらきらした時間を振り返る

ワンオペ育児が続いています。
息子が寝て、オットが残業でいない夜、1人ラジオをかけて過ごすと、東京じゃなくて、自分がアメリカにいるんじゃないかと勘違いしそうになります。
ラジオから聞こえる声はどこかノスタルジック。

今月はどの番組でも真珠湾攻撃の話題が多かった。
攻撃された立場から振り返る歴史と、日本で教育を受けた私の知る歴史。
大西洋単独飛行の成功者としてしか知らなかったLindberghが戦争反対だったことや、「America First」という運動が、第二次世界対戦以前から存在していたことも初めて知りました。
へーーー、です。

ちょうど読了の本も第二次世界対戦真っ最中。

The Sins of the Father (Clifton Chronicles)

The Sins of the Father (Clifton Chronicles)


大学院に通っていた時、真珠湾攻撃の頃のアメリカについて、半年かけて情報収集したことがあります。
3月8日のInternational Women's Dayに、社会学部の教授や学生の前でパネルディスカッションをするという社会学の授業のプロジェクト。

教授に出された課題はただ一つ。
「Be that wonan.」

どんな時代でも構わないので、その時代を生きた女性になり、クラスメートと中絶や宗教、女性の社会進出、選挙権について議論するというプロジェクトです。

イギリスから移住したばかりのアメリカ東部に暮らす敬虔なキリスト教女性、1960年代、Segregation真っ只中の白人女性、1970年代のヒッピー、ビクトリア時代のイギリス人女性。
未来から来た女性もいたなー。
「女性」としていますが、クラスには男性もいました。
価値観どころか、持っている知識量も異なる10人が真剣に議論を重ねる様子は、観客にとっては滑稽に映ったことでしょう。

え?電話?何それ?
いやいや、今では無線の電話があって、写真も送れるんだよ。
えーーーー?

みたいな。コメディですね。
勿論技術進歩が議題ではないので、そこはさくさく進むんですけど。

私が選んだのは、真珠湾攻撃後、強制収容された日系三世の女性。
膝丈の紺色のスカートに、第一ボタンまで閉じた白い襟付きのシャツ。
髪を一つにまとめて、お化粧はなし。
プロジェクトのため、それぞれ衣装に身を包んだクラスメートとキャンパスを横切り、auditoriumに向かいます。
みんな仕事があり、家庭がある、所謂「大人」です。
プロジェクトを知らない年下の大学生から、Guys, it's not Halloween today!!とか叫ばれて。
No, we are doing this for something far better than Halloweenと返します。
アメリカのこんな自由なところが大好きでした。

私が選んだキャラクターがどのように考え、感じていたのか、勿論正解はなく、その時代を研究する文献、本を読み、自分なりのアイデンティティを創り出します。

Japanese American Internment Camps (History Firsthand)

Japanese American Internment Camps (History Firsthand)

家や財産を失い、自由を奪われた彼女は、宗教や中絶をどんな風に考えただろう。
女性の役割をどう定義しただろう。
旦那さんは、皮肉にもアメリカ軍の兵士として第一次世界対戦で戦い、死んでいったという状況で、彼女はどうやって毎日生きる力を維持していたのか。
自分の考えをただ一方的に発表するのではなく、クラスメートとのやりとりの中で、自分の価値観が伝わるようなパフォーマンスが求められます。
楽しかったなー。
大学院に通った中で一番楽しかった時かもしれない。
すごく大変で、だってリサーチには終わりがなくて、文献を読んでも読んでも足りない気がして、コーヒー飲んで徹夜で読んで、最後は胃に穴が開きそうになったんだった。
Satsuki Sudoと、実在する人物からヒントをいただいた名前に、できるだけ近づきたかった。

その時のリサーチスキルや、その時に得た知識が今の生活に役立っているかと言うと、いや、全然、です。
ラジオを聞いていなかったら、真珠湾攻撃について、その時のプロジェクトについて、思い出すこともなかったでしょう。

大学院にいた時、私はアカデミックな環境で一生生きていくと漠然と考えていました。
それが、今は原価率だとか、コスト計算とか、当時一番距離を置いていた、そして多分自分は一生関わらないだろうと考えていたコンセプトに囲まれて生きています。
そして、そうすることで、給与をもらい、生活しています。
何のために留学したのか、と自問することがあるのか、全く留学で学んだことが役に立っていないような環境で、留学したことすら後悔しているのか、というと、やはり、いや、全然、です。

その時は将来役に立つはずと、熱心に取り組んだことが、結果役に立たないこともある。 
Steve JobsはConnecting the dotsと、いつか人生の点が線になると話していたけど、私は線にはならなかったよ。
それが彼と私の差でしょう。
世界を変えることができた人と、そんな人に世界を変えられた人。
でも、悲観していないし、無駄だったとも思わない。
確かに役には立っていないけれど、でも、あんなきらきらした時間があったと懐かしみ、慈しむことはできて、それで充分だと、ようやく折り合いつけて生きられるようになりました。
ラジオから聞こえる英語と、年の瀬と、大切な人の訃報で、自分の人生と生き方を振り返っています。