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不戦敗からのディスポーザー掃除。

先日、外出から戻ると私のデスクに一冊の本が置かれていました。
そう言えば、私の会社で登録している講師が本を書いたと、出版社から送られて来ていたのでした。その講師に自分の企業を担当してもらったことがある営業さんが読みたいというので、先にどうぞーを譲ってあって、それが戻ってきたのです。

そろそろ講師にお礼を言わなくちゃ、と、ぱらぱらー、読んでみます。
え?え?え?
あれ?私のトレーニング内容がそっくりそのまま書かれてる…?あたかも、その講師のアイデアのように。
そういえば、執筆に忙しく過ごしている、といいつつも、会社主催のティーチング学習会には、熱心に参加してたね。
あそこで必死でメモ取って、そのまま家で自分の本にしてたんだ。

英語研修を行う会社ほとんどが、独自のTOEIC指導法を持っています。本質的なところは突き詰めて考えれば同じなのでしょうが、私の会社も当然のことながら、「独自メソッド」と営業・開発・講師トレーニング、そして講師が共通認識として持っています。
そのアイデアが全て、その講師の出版物で文字にされてしまっています。
あー、なぜ付箋が、と思っていたら、営業さんも不思議に思ったのでしょう、私たちのメソッドに酷似している箇所、全てに付箋をつけてくれてありました。
じっくり読んでみると、発音演習の箇所、著作権が私の会社に属するべきチャートがそっくりそのまま使われています。時制問題の例文も、私たちテキストを一語変えただけ。私の会社に関係する人であれば、おそらくこのテキストを使ったことがある受講生も、オリジナルがどの文章なのか、すぐに判別できるはずです。
裏切られた・・・
でももう遅いですよね。
書店で平積みになっていると聞きました。この本を手にした人は、こんな素敵講師の素敵メソッドに支えられている我が社という図ができているのでしょう。

私は年間数百人の講師トレーニングをします。TOEIC指導法も、トレーニング内で提供しています。私たちの講座の質を高めるため、なので、研修は無償ですし、もしその講師が他の研修機関で登録していたとしても、その講師がその会社でのレッスンが上手になったとしても、私は全く気にしない、というスタンスでした。
日本のビジネスパーソンの英語力が上がれば、日本の国力が高まる、私たち会社の開発力だの独自メソッドだの、そんなmicromanagementしませんからっ!と上層部に常に訴えてきたのが、仇となって返って来るなんて。
悔しい。悔しい。悔しい。
でも、悪いのは自分です。甘かった。

悔しいから、もうその本は見たくないんだけど、ついつい、他にも私たちのアイデアが盗まれていないかと読み込んでしまう。
そして、気づいてしまいました。
中には公式問題集を数語変えただけの問題がいくつも使われていることに。
地名や時間は変えられているけれど、根本的な「話題」は同じ、いくつかの設問も同じ。
翻案には当たらないのだろうか・・・?
そしてこんな事実に気づいてしまった私の取るべき行動とは?
えー、だって裏切られただけでも気分悪いのに、この事実を知る私も何か咎められるようなことになったら嫌じゃないですかー。
全然正しい行いではないですよ。
逃げです、逃げ。

著作権に詳しい部署に問い合わせます。私からの報告後、全く間を置かずに淡々と告げられます。
著作権侵害の訴訟は起こさないこと。講師が「たまたま」同じ指導法でずっと講師業を勤めてきた、と言われたら、それを覆す証拠がないこと。確かに本の中には私がよく使う表現やアイデアが散見されるが、それも偶然で片付けられること。弱小(すみません、CEOの言葉です)出版社相手に損害賠償請求しても、裁判にかかる費用を賄えないこと。裁判に私の時間を割くなら、その人件費のが、会社にとっては大きいこと。そして、耳が痛いですが、何より、自分を、自分のアイデアを守る対策を練らなかった、その未熟さが招いた結果なんだと理解し、2度と同じ目に遭わないよう、性悪説に基づいて行動すること。

完全不戦敗です。
悔しいけど、法務の言うことが正しいのもわかっているので、裏切られた、と、私なりの正義振りかざしたところで、何も変わらないのです。
仕方ないから、心を無にして、キッチンのディスポーザー掃除します。
ぴかぴかにしちゃうんだから。